今回は、スポーツ分野で活躍されている方です。パラクライミングの2022年ワールドカップで銀メダルを獲得された濵ノ上文哉(はまのうえ ふみや)さんを、ご紹介いたします。鳥居寮の訓練生OBの方です。ご本人様の紹介文と、お母様からの特別寄稿を頂きました。

 

◇プロフィール

濵ノ上 文哉(はまのうえ ふみや)
 京都府出身、1990年2月生まれ32歳。両親、妹の4人家族。転勤をきっかけに現在は東京にて一人暮らし。
 2003年、中学二年生の頃に目の特定疾患である網膜色素変性症の診断を受ける。病状進行の末、大学受験をきっかけに2008年障害者手帳を取得。

クライミング中の濵ノ上さん

 

 現在は、大手総合商社の子会社で勤務する一方、障害者クライミング競技(パラクライミング)日本代表選手としても活動中
 2021年パラクライミング世界選手権@モスクワB2/男子クラス 優勝 金メダル獲得
 2022年パラクライミングワールドカップ@インスブルック B2/男子クラス 準優勝 銀メダル獲得
 その他国内外での入賞多数

 

◇クライミングとの出会い

 2016年にNPO法人モンキーマジックの月例イベントに参加したことをきっかけにパラクライミングという競技に出会いました。
 当時は特別クライミングをしようという強い動機があったわけではなく、運動不足解消や職場以外の居場所を見つけるために、いろいろなイベントに参加してみた中の一つでした。
 ボウリング、ジョギング、テニスなどいろいろとやってみた中で、健常者・障害者という枠組みに捕らわれないイベント内の自然な空気感と自分の手足で高い場所に上る達成感とスリルにとても魅了されました。

◇選手を目指すきっかけ

 当初は月に2~3回程度開催される交流イベントに参加しながら、趣味の一つとしてクライミングを楽しんでいましたが、回数を重ねる毎にクライミングの奥深さを知り、もっと上達したい気持ちが高まってきました。
 そんな折、モンキーマジックの代表の小林幸一郎さんが世界選手権で優勝し金メダルを獲得しました。
 祝勝会にJAPANのユニフォームで登場し、ポケットから徐にくちゃくちゃのメダルを出す彼の姿はとてもかっこよく映りました。
 何より、優勝した彼以上に、周囲の人たちが喜びを分かち合っている姿が印象的でした。
 すごいなぁと思うと同時に、同じ病気を抱える彼ができることなら、自分にもやってできないことはないと考えました。

◇世界へのチャレンジ

 それ以降、一般のスクールに参加したり、小林さんの練習に混ぜてもらうなどしながら、
 少しずつ練習環境を整え、平日は仕事を終えて、休日は朝から晩まで、ほとんど毎日のようにクライミングに明け暮れました。
 好きだったお酒も控え、素人なりに食事制限など、思いつく取り組みをいろいろやってみました。
 その結果、2018年に初参加した日本選手権で準優勝し、日本代表権を獲得しました。
 そして、同年にオーストリアで実施された世界選手権で銅メダルを獲得しました。
 現地には母と妹も応援にかけつけてくれ、喜びを分かち合いました。
 大会直前に危篤になっていた祖母にも、世界大会で入賞したこと、東京で多くの仲間に支えられながら頑張っていることを伝えました。
 それまで声を発することもできなかった祖母が、労いを伝えるように最後の力を振り絞って「うん!」と力強く返事をしてくれました。その約一週間後に祖母は逝去しました。
 視覚に障害を負っている分、孫の中でも特に心配をかけていたと思うので、最後の最後に少し安心してもらうことができたのかなと思います。

◇今後の目標

 年3回開催されるワールドカップの全戦出場と年間王者になること
 2年に一度の世界選手権5連覇
 パラリンピックでの優勝など競技において達成したい目標はいくつかあります。
 そして、そうした自己実現のプロセスの中で、障害は必ずしも足かせではなく、人生のギフトになり得ることを体現すること、自身と同じように障害を抱える人たちやその周囲の家族などの人生の選択肢を増やすこと

などを少しずつ達成できれば良いなと考えています。

◇最後に

 この記事を読んでいただいている方の中には、障害当事者となって間もない方々もいらっしゃるかと思います。
 仕事やプライベートなど将来のことを考えると、いろいろ不安に打ちのめされている方もいらっしゃるかと思います。
 今となってはあっけらかんと生きてそうな私も、病気が進行し始めた直後は自分の境遇を呪い、悲観的になってみたり、周囲に当たり散らしてみたり、逆に開き直って明るくふるまってみたり、情緒が忙しい時期がありました。
 ただ、そうした時期の葛藤や挫折、数々の恥と失敗すら、振り返れば今の自分を下支えしてくれている大切な糧になっています。
 そして、少しずついろいろな経験を重ねながらやってみたいことを素直に言葉にすれば、手助けしてくれる人は案外いること、そこそこハードルの高そうなことでも、最初の一歩を踏み出してみれば実現の道筋は結構見えてくることを知りました。
 無論、何もかも実現できるとまでは言い切れませんが、ひとまず障害だけを理由にあきらめなくてはならないことは、あまりないんじゃないかというのが現在の私の感想です。

 

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  • 濵ノ上文哉

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以上です