(ひと月遅れて)寅年です

京都駅の南側に位置する東寺。正式名称を教王護国寺といいます。新幹線や高速道路から五重塔が見えると「ああ、帰ってきたなぁ」とほっとするのは、京都に住む人あるあるだと思います。

さて、今年は36年に一度巡ってくる「五黄の寅」。「五黄」は占いでも用いられる、九星気学の九星のひとつ。一白水星・二黒土星・三碧木星・四緑木星・五黄土星・六白金星・七赤金星・八白土星・九紫火星の9種類のうち、五黄土星は最強の運気を持つといわれています。そして「寅」はご存知、十二支のひとつ。勇敢で何事にも恐れず立ち向かう強さを持っています。この二つが揃う今年は、まさに最強の年!

冒頭に触れた、東寺にある金堂の本尊は薬師如来です。その脇を固めるのは日光菩薩と月光菩薩。そして十二支に割り当てられた十二神将が如来の台座をぐるりと囲み、あらゆる方角から如来を守ります。「寅」の方角としては東北東よりやや北。鬼門とされる丑寅を最強の寅が守っていることにも、また意味があるように思えます。ちなみに当館は「さわって学ぶ仏像の基礎知識」という点字・墨字併記の資料を所蔵しています。ご興味のある方はぜひどうぞ。

そしてもうひとつ。「トラ」と聞いて思い出すのは中島敦の「山月記」。高校の教科書に昔からよく出てくる短編小説です。家でこの小説を話題にしたところ「まぁアレやな、プライドが高すぎるっちゅーのも、アカンな」。…非常に簡潔にまとめられてしまいました。当館で所蔵しているのは、森見登美彦の「〈新釈〉走れメロス 他四篇」。カセット4巻、音声デイジーに表題作のほか、山月記・藪の中・桜の森の満開の下・百物語が収録されています。京都を舞台に、森見版にリメイクされた文豪作品。本来は別々のものなのに、この森見5作品が、実はつながっているのです…!

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」。こんな駄文をおみまいしつつも、今年も利用者の皆さまに少しでも興味をお持ちいただけるなら幸いです。

(はなのぼう 2月号より)