先月、とある高校の定期演奏会を聴かせていただく機会に恵まれた。服装も「クラシックのコンサートに出かけるぞ」風な、ロングスカートやブーツといった感じに。いつもと足音が違うせいか、朝、開口一番に視覚障害職員から「今日はどちらかにお出かけですか」。むむっ、よく気付いたねぇ、今日は〜…と、定期演奏会の件を説明。

数時間後。遅出で出勤してきた職員がおずおずと「高木さん、今日は何かあるんですか。装いが…」。ああ、実はねぇ、今日は〜…と、先ほどと同じ説明。しかし何だね、そんなに違うかい? 普段の私は。

会場は京都市の音楽芸術施設のひとつである、京都コンサートホール。大ホールの正面やや右よりには、西日本最大と言われるパイプオルガンが設置されている。娘が中学生の頃には合唱コンクールの会場としてよくお世話になった場所。京都市交響楽団の本拠地であり、世界的な演奏家のコンサートも行われる場所にもかかわらず、京都市中の学校に合唱や演奏会の場としても提供されている。「あそこの舞台に立ったんやで!」と、生徒達も誇らしく、生涯の自慢になることだろう。

仕事を早く切り上げてお休みをいただき、慣れないスカートを巻き込まぬよう気遣いながら北大路通を東へ、自転車で走ること約20分。待ち合わせた友人と席を確認すると、ステージ正面右側、パイプオルガンにほど近い場所! すぐそこの真正面に合唱の学生、左下のステージにはオーケストラが並び、指揮者や演奏者の顔もはっきりわかる、私にとっては初めての席だった。

演奏が始まるや否や、ホンマに高校生!?と思うほどの音色と声の美しさ。そして生で聴く迫力。気付けば前のめりで聴き入っていた。感染防止でより一層体調に気を遣い、限られた時間の中、練習も工夫を重ねたに違いない。

すっかり心が潤った秋の夜長。帰りの自転車は余韻にひたり、得も言えぬ幸福感に包まれていた。思えば京都市には、音楽高校や美術工芸高校といった芸術に特化した公立高校がある。早くから専門的に、本気で学びたい生徒達には願っても無い環境だろう。がんばれ、若き芸術家たち!

(情報ステーション「はなのぼう」2020年11月号より)