言葉の力
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朝のニュースで紹介されていた、とある電鉄会社の車掌さんの話。車内アナウンスは「子どもさんの安全を第一に考え、ゆっくりとお降りください」など、台本なしのアドリブでこなしておられる。
何年も前の話だが、サービスの職員が市バスで遭遇した運転手さんからは「今日も一日、お疲れさまでした」というアナウンスがあったとか。そんな話を家ですると、「その運転手さん、たぶん知ってんで」と次女。遭遇率は朝の登校時に高かったそうだが「おはようございます」の挨拶はもちろん、今日の天気も教えてもらえた上、バスを降りる際は「気をつけて、いってらっしゃいませ」。はじめの車掌さんも運転手さんも、安全運行が第一なのは言わずもがなだが、このような取り組みに対し、車掌さんの会社には実際にホームページを通じて「朝から気分良く出勤することができた」「心が温かくなった」などの反響があったとのこと。ちなみに次女も「小粋なトークが、朝の低いテンションをちょっとずつ上げてくれはる」と話していた。
先日、利用者さんのお話を伺う機会があった。「ここ(京都ライトハウス)は、誰のための施設なんやろか」。すれ違っても「こんにちはー」のひと言もなく、黙って通り過ぎる。「なんか、寂しいわ」。面と向かってお話をするとしても、職員が名前を名乗らない。「胸元あたりにあるらしき名札に、顔を近づけて見るわけにもいかんやろ?」と苦笑い。お恥ずかしいというか、残念というか。
相手に視覚障害があろうとなかろうと、大人だろうと子どもだろうと、「自分」という人間を覚えていただくのには時間がかかる。大切なのは声掛け、挨拶、名乗り。職員であればなおさら自分から名乗るべき。それが信頼関係を築く第一歩であると思っているし、今年の新人研修でも口酸っぱく伝えたことだ。
共通して言えるのは、言葉には力があるということ。プラスの声掛けは、言われた方も言った方にも良い効果をもたらす。挨拶なんて、減るもんじゃなし。また何かあれば教えていただけるようお願いし、お見送りした。
(はなのぼう5月号より)