正月にお供えする鏡餅。以前はそこそこ大きな餅を供えたものですが、最近はプラスチックパックに充填された手のひらサイズで済ませています。この風習、民族学的には、新しい年と共に家々を訪れる年神様から良運を授かるため、運気の象徴を供えてお迎えしたことが始まりとされています。

運気の象徴とは、鏡餅は概ね丸い餅と橙と串柿で構成されますが、これは三種の神器である鏡・玉・剣を模したとされ、餅は鏡で開運、橙は玉で金運、串柿は剣で厄払いを指すとか。ただこの年神様、ご自分を豪勢に迎えてくれる家には運を授けられ、手のひらサイズには素通りされている気がします。

鏡が開運を象徴するのは、天の岩戸に隠れたアマテラスが鏡で外におびき出され、再び世の中が光に満ちた神話に由来し、以来、鏡にはアマテラスが宿るとされています。西洋でも鏡には真実を語る力が宿るとされ「この世で一番美しいのは誰?」と問われる物語がつくられるなど、鏡の神秘性は世界中、同じようです。

さて年頭に引いたおみくじには、失せ物や縁談など20ほどの運の勢いが書かれていました。でもそれらをよく読むと吉凶どちらであっても、心の持ち様と人との関わりの中でなんとでもなることばかりで、つまりは、人間界のことは人間どうしで解決しなさいということでしょう。

どうやら神様は、自分をしっかり持ち日頃から人との関係を大切にすることが良運につながることをお示しのようです。

(五十嵐 幸夫)