家のコンクリート階段の隙間からアサガオが伸びています。どこからか種が飛んできてここで芽を吹いたのでしょう。こんな場所でと思いつつ棒を添えてやると次の日には上手く巻き付き始め、何とも健気でたくましい姿をみせてくれています。

アサガオはもともと我が国には自生せず、奈良時代、種子に薬効があることから遣唐使が持ち帰り広めた花で、中国ではこの薬効で命拾いした農夫が牛を引いてお礼参りをしたなどの故事や、七夕(旧暦)の頃に花をつけることから牽牛花(けんごか)と呼ばれています。

何かに巻き付いて生きるツル性植物は体幹をつくる必要がないのですぐに繁茂します。そんなところがどうしても好きになれなかったのですが、ツル性植物には何の責任もないこと。むしろ何かに支えられることで自立できるならば、そんな世界こそが健全です。

突然やってきた我が家のアサガオ。コンクリートの隙間で一生を終えるのは不憫と思ったり、いやいや、どこであろうと芽を出し花を咲かせ種を残せば十分と思ったり、そんな人間のくだらない人生観などおかまいなく今日も元気に成長しています。

(五十嵐 幸夫)