薔薇が見頃です。源氏物語にも登場するなど古来より日本でも親しまれている花ですがどこか西洋のイメージが強いのは、多くの品種が西洋の歴史や人物にまつわる物語をまとっているからでしょう。それもまた観賞するときの楽しみの一つとなっています。

チューダー・ローズ。赤に白が合わさる模様でイギリス王室の紋章にも使われています。この薔薇は中世イングランドで起きた王位継承をめぐる2つの家の戦い〜ランカスター家が赤薔薇をヨーク家が白薔薇をシンボルとした薔薇戦争を和解に導き、チューダー王朝を興したヘンリー7世(ランカスター家)が、両家の友好の象徴として図案化したものです。
その後息子のヘンリー8世、孫のエリザベス1世が絶対王政を極め今日のイギリスの礎を築いたことから、チューダー・ローズは、絵に描いた薔薇にもかかわらずイギリスを象徴する花となり、そして赤薔薇は国花となります。

エンプレス・ジョセフィーヌ。ナポレオン皇妃ジョセフィーヌの名を冠した薔薇で、こちらは実在します。彼女はナポレオンとの仲がおかしくなり始めた頃から薔薇集めに走り、中国から四季咲きの薔薇を取り寄せてこれを広め、人口受粉の方法を確立させて品種改良の緒を開き、また詳細に薔薇を描かせて植物学に貢献するなど、本人は好きなことをやっているだけだったようですが、現代の薔薇を生み出した人物としてその功績が讃えられています。

情報製作センターが刊行する女性のための点字情報誌「きょうきらら」19号では薔薇を特集しています。観賞や効能などの情報に薔薇香る付録をつけ、キラリ輝く生き方へのさまざまな提案とともにお届けしています。
ぜひお手にとり、薔薇と過ごす時間をご堪能ください。

(五十嵐 幸夫)