布団着て 寝たる姿や 東山

京都・東山三十六峰の景観を詠んだ服部嵐雪の俳句です。

まだ地上を走っていた京阪電車の四条から七条の車窓から望める東山の稜線が、まさにこのとおりであることに気付いた予備校通いの頃、何とも温かみのあるこの俳風に日々癒やされたものです。

服部嵐雪。江戸の生まれで元は武士。仕官をあきらめ俳諧師に転じます。芭蕉の高弟でありながら芭蕉との確執や軋轢が絶えなかったと伝わります。才能ある者同士の複雑な心情によるものでしょうが、やはりここは、弟子としての嵐雪に非があったようです。

この句が詠まれたのは冬。江戸から上ってきた嵐雪にとって冬枯れの京に俳句につながるお題がなかなか見つからなかったところ、「布団着て」、つまり当時掛け布団を着るのは関西独自の就寝スタイルで、京の象徴である東山の姿と流行りの寝具姿を初めて見たことが重なり、思わず詠んだ句とされています。

 

さて、本号がお手元に届く頃はすっかり春になっていることでしょう。
でもこの稿を書いている今は、ようやく東風が吹き始めようとしているところです。
こんな時季にも嵐雪の作品が思い浮かびます。

梅一輪 一輪ほどの あたたかさ

(五十嵐 幸夫)