さぁ、お待たせしました。サテライトでは、初めての企画です。昨今、視覚障害者の方が駅ホームから転落する事故が続いています。悲しい事故を防ぐ手段としてホームドアが有効です。京都市営地下鉄には東西線全駅にホームドア、烏丸線3駅(京都、四条、烏丸御池)に可動式ホーム柵が設置されています。可動式ホーム柵や駅の構造、安全な利用の仕方を交通局の方のご協力を得て、研修していただきました。集合は、地下鉄烏丸線竹田駅。ここには運転手さんたちの研修所があり、今回特別に研修用の可動式ホーム柵に触らせていただきました。実際の駅ではここまでしっかり触って、柵の向こうに手がいくと「(警告音)ブーブーブー!危険です、ホーム柵から離れてください」というメッセージが流れますので、みなさん、くれぐれも可動式ホーム柵には触れないでくださいね。

研修所内には、長さ半分に切った車両とホームと可動式ホーム柵があります。数段の階段を上ってホームに上がり、開く前のホーム柵を触ってみます。

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(研修所の中。手前から、ホーム、可動式ホーム柵、長さ半分の烏丸線車両)

技術監理課の金川(かながわ)課長から説明があります。東西線は自動運転ですが、烏丸線は運転手さんが手動で電車を停止させています。そのため車両ドアとホームドアがわずかなずれが生じる場合もあるため、可動柵の大きさを広めにとってあり、確実に乗車できるようにしてあるそうです。ですので、なるべく乗車口の真ん中から乗車くださいとのことでした。ホーム柵を伝い歩きする場合、開閉ドアの下は空いています。白杖が抜けた「スカスカな様子」を感じたらまもなく乗車位置を示す点状ブロックがあるため、ドア位置の把握も可能だそうです。弱視のかたがドアの真ん中位置を把握しやすいように、ドアの中心部にグリーンの太めの縦の線を入れ、さらに中心にゴムをはめています。

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(可動式ホーム柵の開閉ドア部分をさわる利用者さん。ドアが収納されるところとの違いを実感します)

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(研修所内、可動式ホーム柵のドアが開きました)

みなさんは、可動式ホーム柵のドアが開く時と閉まる時の音が違うのをご存知ですか?開くときは、少し優しい印象。閉まるときは、閉まりますよ!と言われているような印象です。「ホーム柵が開くのと電車のドアが開くのとどちらが先ですか?」の質問があり、開くときはホーム柵が先に開いてから電車のドアが開き、閉まるときはホーム柵が先に閉まってから電車のドアが閉まります。音による工夫は他にもあります。列車到着・停車・発車時のアナウンスは、烏丸線上り(国際会館行き)は男性の声、下り(竹田行き)は女性の声です。東西線上り(六地蔵行き)は男性の声、下り(太秦天神川行き)は女性の声です。到着および発車時の音楽も、烏丸線上りと下り、東西線上りと下りで、それぞれ違います。今度地下鉄に乗る時に、確認してみてくださいね。

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(車内乗車位置を示すプレート。6号車2番ドア)

車内にはさまざまな工夫があります。ドアが開閉するところ、高さは約140㎝のところに貼られたプレートには、車内乗車位置が表示してあり、自分の乗った車両とドアの位置がわかります。横に並んだ丸い凸が車両編成(地下鉄の場合6両、東西線京津線は4両)で、その上下に丸の凸がある場所が現在乗車している車両、縦棒と横棒を足すと車両のドア数でそのうち横棒が乗車ドアの位置になります。点字と墨字(すみじ 点字に対して、書いたり印刷してある文字のこと)も併記してあります。

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(ドア上部に設置された車内案内表示。以前よりも液晶画面がはっきりして、ロービジョン(弱視)の方にも見やすくなったかもしれませんね)

竹田駅を後にして、次は烏丸御池駅へ移動します(途中、京都駅には可動式ホーム柵があります)。まずは烏丸線のホームへ。

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(烏丸線 烏丸御池駅上り2番線ホーム。可動式ホーム柵の内側に点字ブロックがひいてあります。点字ブロックの上、天井には蛍光灯がならび、点字ブロックと同じように1本の光の線になっています。ロービジョンの方は、白杖で足元の点字ブロックを伝いながらこの光の線を目で追っていくと、より安心できるかと思います)

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(烏丸線可動式ホーム柵のドア収納部の上部に、車両乗車位置のプレートが貼ってあります。プレートをさわる利用者さん)

次に、東西線ホームへ移動します。

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(東西線のホームドア。天井から床まで完全に壁になっています。壁とドアはガラス張りで、線路を走る列車が見えます。ドア沿いに線状点字ブロックはありませんが、乗車位置には点状点字ブロックがひいてあります。ドアは部分的に朱色です)

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(階段やエレベータから一番近い乗車ドアへは、点字ブロックで誘導されています。白杖で点字ブロックを確かめる利用者さんたち)

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(東西線のホームにある乗車位置表示プレートは、開閉ドアの左壁にあります。進行方向の矢印は、点字でも表記してあります。利用者さんが、車両を示す丸い凸をさわっています)

次は、国際会館駅へ移動します。途中、鞍馬口駅を出発したらすぐに耳を澄まして車内アナウンスを聴いてみてください。「白い杖を持った人や盲導犬を連れた人を見かけたら、みなさまの温かいお声かけをよろしくお願いします」。北大路-鞍馬口駅間のみ流れるアナウンスです。最近は、乗務員や駅員だけではなく、一般の乗客のみなさんが視覚障害者のかたに配慮していただいたり声かけをしてくださるようお願いするアナウンスが各鉄道会社の駅および車内放送で流れます。駅構内にも啓蒙ポスターが多く貼られています。

国際会館駅には、可動式ホーム柵はありません。ホームドアの無い多くの駅では、大規模改修の際に「内方線(ないほうせん)つき点状ブロック」の設置が義務付けられるよう、今年度中にも省令の改正がなされる予定です。「内方線つき点状ブロック」とは、点状ブロックのホーム内側部分に線状ブロックを設け、ホームの端がどちらにあるかがわかるものです。線状ブロックは、白杖で伝うようにして歩きます。その時に白杖を左右に振って歩くと、線状ブロックの反対側にある柱や階段の壁も見つけ、安全を確保することができます。そのほか、電車乗降時のホームと車両の隙間や段差の安全確認、ドアと車両連結部の違いなど、交通局の職員さんおよび歩行訓練士の同席のもと、ミニ歩行訓練を行いました。

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(国際会館駅 内方線を白杖でさわってみます)

午前中たっぷりとお勉強しましたので、お腹もぺこぺこ。外は、太陽がまぶしいくらい、秋の青空です。公園のベンチでお昼ご飯をいただきます。

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(木漏れ日の下で、利用者さんとガイドヘルパーさん4人)

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(利用者さんとガイヘルさん。外で食べるご飯、おいしかったですね!)

宝ヶ池公園は、江戸時代にため池として始まった宝ヶ池を中心に、四季の自然が美しい雑木林や川があります。南面には五山の送り火「妙法」。まずは、平安騎馬隊の馬舎と馬場へ。子供たちの交通安全見守りや時代祭の先導などを行っている馬たちは、引退した競走馬です。おとなしくて、やさしい瞳の馬たちには、京都の地名などにちなんだ名前がつけられています。馬の手入れをしていた職員さんに勧められ、みなさん、馬の鼻筋をなでなで。「かわいいね-」と笑顔がこぼれます。

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(額に白の模様がある栗色の馬の鼻をなでる利用者さん)

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(馬場では1頭の馬が走っています。馬場横でベンチに座る利用者さんたち。馬上の職員さんは警察の制服を着ています。)

馬場を走る馬の様子を堪能した後は、1周約1500Mの池を目指して歩き出します。池のほとりには東屋があり、休憩もできます。国際会館と水面に映る色鮮やかな木々の緑と青い空と白い雲。池にはコイとカメとアイガモが元気に泳ぎ。ひたすら静かでのんびりした空気。遠くにシカの姿を確認した辺りでは、カツラの木々が色づき始めたころで、かすかに甘い香りがします。お天気に恵まれ、気持ちの良いぶらぶら歩きができました。

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(宝ヶ池の向こうに比叡山と国際会館を望む。池の水面には青空と白い雲が映っています。桜の葉が赤く色づき始めています)

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(東屋の先から池を眺めている利用者さんたち。この場所は、映画の撮影でも使用されました。奥のほうにボート乗り場があります)

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(ガイヘルさんとおしゃべりをしながら、のんびり歩く利用者さんたち。背の高い木々が太陽の光をおだやかに遮ってくれています)

みなさん、朝早くから、遠くまでお疲れさまでした。また次回も、楽しい時間になりますように。たくさんのご参加、お待ちしております。

(鳥居寮 京極裕子)