モーツァルト作曲「ピアノ協奏曲第21番第2楽章」。曲の名はご存じなくても、どこかで一度は聴かれている美しい曲です。
この曲には「エルビラ・マディガン」という副題がつくことがあります。
これは実在した女性の名前で、道ならぬ恋の末に心中して果てた人物。なぜそのような女性の名前が副題に? それはこの心中事件を描いたスウェーデン映画「エルビラ・マディガン」(邦題「短くも美しく燃え」)で、この曲が効果的に使われていたからです。

映像、ストーリー、音楽、役者の演技力、監督の才能。映画の出来映えが決まる要素です。時には音楽が本編よりも印象に残ることがありますが、それは映画全体が秀逸だからであり、映画に限らず感動する演目はすべて、これらのバランスがとれた完成度にかかっています。

シネマ・デイジーは、これらの要素のうち主音声はそのままに、映像で表現されている、場面、背景、登場人物の動きなどを言葉で解説し、視覚に障害がある方などが楽しめるよう作られた映画です。
映像がないので映画本来の完成度を堪能することはできませんが、言葉の解説が想像力をかき立て、自分の中で作品を完成できる感覚が味わえます。
まだまだ本数は少ないですが、情報ステーションでも利用できます。ぜひ一度ご鑑賞ください。

道ならぬ恋の果ての心中。フィクションならばともかく、現実には、やはり身勝手の極みと断じられるようです。それでも、倫理に外れるとはいえ命を賭けた恋物語にどこか心が動かされるところがあるのは、人の世には一つの尺度では測れない奥深さがあるからでしょう。
欲望の本質を見極め、それでも突っ走るか踏みとどまるか、そういう状況においても、お役に立つ一冊を提供していきたいものです。

(五十嵐 幸夫)