「興味 心・深」第5回

※同じ視覚障害をもつライトハウス職員が、視覚障害をもつ方々の「生の声」を、お伝えしていくこのコーナー。第5回目は第1回目からのご登場! 岡田太丞(おかだ たいすけ)さんに、ライトハウスのような施設や、当事者団体の横のつながりの大切さについて語っていただきました。

久保 京都や大阪などでは、視覚障害者関係の施設や運動団体以外にも、任意団体などが発足し、様々な側面から支援体制が整いつつあるように感じています。それらが結びついて、私たち視覚障害者にとって、より暮らしやすい世の中へと向上させていくためには、今後どのようなことが必要になってくると思いますか?
岡田 何かとても難しい質問ですね。確かに、各地域で様々な団体が活動されておられます。この対談コラムでも話題になりました「働く視覚障害者の会」などもそういった活動をしている任意の団体の1つです。もちろん、日頃お世話になっております京都ライトハウスさんを初めとする施設も、地域に根ざしたサービスを提供していますよね。しかし、私が思うには、それぞれの活動は大変素晴らしいとは思うのですが、それらの施設や団体に何か横のつながりというか、一体感が無いように感じています。団体、施設ともに、各地域に根差した活動をされているので、横のつながりといった一体感を感じないのは仕方ない当然のことなのかもしれませんが、何かもったいないなあ〜と思うこともあります。
久保 確かにもったいないという表現はピッタリと来るように思いますね。
岡田 そうでしょう、だからそれらを何か1つに集約させるとは言わないまでも、横のつながりを作る会を作れないか? といったことが話題になったこともあるのですよ。それが久保さんも1月に参加された三都物語の会を作ろうとなったきっかけなんです。
久保 ああ〜あの三都物語の会が出来るきっかけはそういったことなんですか。1月の会の時、岡田さんが言われていたように、大阪、京都、兵庫の関係する人々がスクラムを組んで一体となって、我々視覚障害者を取り巻く課題を改善するべく、前向きに活動していくことが必要という話は、全くそうだな、と思ったとともに、私自身も京都という地だけで物事を考えていては、もったいないな、と感じました。
岡田 あの三都物語の会は、大阪、京都、兵庫を中心とした我々のような当事者はもちろんのこと、施設の関係者、ボランティアの方々等、視覚障害に関係する様々な方々が参加されている大変貴重な会なんです。それらの方々が地域を超えて、立場を超えて、視覚障害者を取り巻く課題の解決の為に、また未来の視覚障害者がより豊かな社会生活を送ることができる為といった、共通の目標に向かって、その力を結集させることが出来れば関西から何かを動かす声を挙げることが出来ると思うのです。
久保 そうですよね。スピーチで岡田さんが言われていた、大阪、京都、兵庫の力を結集出来れば、まさしく、3本の矢となり、より強いパワーとなりますよね。
岡田 そこなんです、冒頭の久保さんのご質問ではないですが、大阪は大阪で、京都は京都で、兵庫は兵庫で各々様々な団体が様々な素晴らしい活動をされておられますが、やはり、1つの自治体、市町村レベルでは行政に対して何か言うにも、どうしても限界があると思うのです。そこで、この大阪、京都、兵庫といった3本の矢を持ってすれば、多少なりとも行政に対して何か言えるのではないか?視覚障害者を取り巻く課題を解決するのに、より効果的ではないか? と考えています。ああ〜ダメですね。また熱く語っていますね(笑)
久保 いいじゃあないですか、熱く熱く語りましょうよ。これって、とても大切な話だと思うのですよ。少なくとも京都にいる僕としては、今までの京都の発想では、そういった広域連合的な考えは無かったのではないかなあ〜いや、仮にあったとしても、そういった動きをする人はいなかったのではないかと思います。だからこそ地域を超えて、もっと広域的な視点から私たちの仲間の意見を吸い上げたり、それを要望として訴えていけるようになりたいですね。
岡田 いいですね、久保さんも熱くなってこられましたね(笑)でも、私が思うには、京都での視覚障害者に対する様々な活動は大変素晴らしいものがありますし、その蓄積されたノウハウを、京都だけに温存しておくのはもったいないと思うのです。私自身が京都生まれの京都育ちといった、生粋の京都人だからこそ言えるのですが、京都のウィークポイントといいますか、いけない部分は、内々で固まるというか、実に社交的でない、保守的な考えが主流を占めているところなんですよね。ですから、視覚障害の世界でも、その京都のノウハウを、是非とも大阪や兵庫にも広めてもらいたいのです。
久保 いやあ〜痛いところをつかれましたね。さすが生粋の京都人ですね。京都のことをよく分かっておられます。決して京都だけがノウハウを持っているとは思いませんが、大阪や兵庫がお持ちのノウハウを含めて、三都物語の会を通して、それら各地のノウハウを共有して、視覚障害者にとっての課題を解決して行ければ良いですよね。
岡田 確かに三都物語の会を作るきっかけとなった、そもそものコンセプトはそういったところにありますが、参加されている方々が本当にそういったことを望んでおられるのか? 単に情報交換や色々な方々との交流の場といった側面を重視されていることはないのか? そのあたり、私には分からないところなんです。各地域の幹事さんのご尽力により、本当に地域や立場を超えて様々な方々が参加して下さる素晴らしい会となってきました。これだけの方々が集まる会はそうないでしょうし、会の器としては十分過ぎるぐらいだと思います。あとはこの素晴らしい器をどの方向に進めて行くのか、それは参加されている皆様方の考えによると思います。
久保 参加者が会を作られたコンセプトをしっかり共有していくことも大切なんでしょうし、会以外の、例えば各地域での運動の中でも、そのような視点をもっていくことが必要になるのでしょうね。そうそう、先程、岡田さんが言われていた、関西から何かを動かす声を挙げるということですが、具体的にはどうやって声を届けることを想定されていますか?
岡田 会の方向性が分からないということなので、あくまで仮での話とさせて頂きますが、私は仮に三都物語の会を通して出て来た視覚障害者を取り巻く課題を改善するための政策等については、本来でしたら政府に直接と言いたいところですが、それは無理な話ですので、現在、政府が唯一の公の視覚障害者の会と認識している日本盲人会連合に、我々としての政策を提言できれば良いなあ〜と考えています。そういったことを提言できるレベルの会になって欲しいと願っています。
また、国会議員の方々の中にも、私たちの考えや運動に賛同してくださる方もおられます。そういった議員の方々を巻き込んで我々の声を何とか行政に届けたいですね。
久保 こうして話していると本当に夢が広がって来ますね。
岡田 そうですね、我々、関西から常に何かを発信できる、そういった動きが出来れば良いですね。
久保 私たちのことは、私たちが主役となってしっかり考え、実現できるように声を挙げていく…。そのためには、周りの協力が必要ですので、私たちの思いにしっかり賛同してくださる方々とのつながりをもっていく。それが夢の実現のための足掛かりになるのでしょうね。
と、岡田さんと熱く語り合って来ましたが、今回の5回目の対談で、興味心・深の岡田さんのコーナーは一旦、一区切りとさせて頂きます。
岡田さん、この興味心・深の立ち上げの最初から、長い間、本当に有難うございました。
岡田 こちらこそ本当に有難うございました。厚かましくも、こんなに長い間登場させて頂きまして感謝致しております。
久保 いやこちらこそ有難うございました。今回で一旦、一区切りとなりますが、また機会があれば、このコーナーに登場してもらっても良いですか?
岡田 もう話すネタは何もないですよ! でもまたお声を掛けて頂けたら喜んで参ります。有難うございました。