「やってみよう」の精神に支えられて

株式会社 公文公 教育研究所 寄下 博司

私は先天性の全盲ですが、現在一般企業の社員として働いています。就職活動では、パソコン画面の読み上げソフトを活用し、また英語力も活かせるような仕事を探していました。その中で出会った、「個々の人間に与えられている可能性を発見しその能力を最大限に伸ばす」との理念に共感し、日本公文教育研究会への入社を決めました。

最初の6ヶ月間は、アルバイト社員として人事部に配属され、文書整理や電話応対などの業務に加えて、会議や講演などのテープ起こしの仕事も行うようになりました。「発言者一人一人の思いを全力で受け止め、読む人にも分かりやすい議事録を作り、自分も多くのことを学び、また、誠実さが伝わる仕事をしたい」との思いで、一つ一つの業務を進めてきました。そうして、昨年度から正社員になることができました。

就職活動の過程で、京都ライトハウスで3ヶ月間、テープ起こしの訓練も受けました。その経験が実際の仕事でも活かされ、社内の方々にも喜んでいただいています。

一緒に仕事を進めるに当たり、周りの健常者の皆さんにとっては、自分が全盲であることで、最初はどのように接したらいいのか不安もあったと思います。しかし、視力を要する場面で力を借りたり、声を掛け合う中で、お互いにコミュニケーションを円滑に図れるようになったと思います。

公文式英語の音声教材を使って、仕事をしている様子

現在は公文公教育研究所の一員となり、公文式の創始者である、公文公(くもんとおる)の思想や教育法を学び、英語文書の校正業務にも携わっています。さらに、海外からの英文電子メールの内容を上司に伝える業務も加わり、仕事の幅も広がっています。そして、近い将来に向けて、「英語での国際会議などのテープ起こし業務などもできるようになりたい」との目標もできました。その準備として、公文式英語の音声教材を聴きとって正確な綴りで書き起こせる訓練をしています。

このように、仕事を通じて自分の夢が実現されると共に、周りの方々にも少しずつ貢献できるようになったと思います。公文公は、「やってみよう。やってみなければわからない」との言葉を遺されました。私自身、この言葉を励みとして、今後も一つ一つの業務に積極的に取り組んでいきたいと思います。就労を目指している皆さんを始め、多くの視覚障碍者の皆さんにも、この言葉をぜひ心にとめていただき、自分自身の可能性を信じて、さらに元気に、前向きに歩んでいただければと願っています。