はなのぼう 2009年10月20日号
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財政危機が懸念されている大阪府は、9月24日に大阪府立図書館も含めて民間に委託する計画を発表しました。業務の見直しや経費節減は必要なことでしょうが、何でも民間に委託すればよい、というのは、公的な責任からみて疑問との意見も出されています。

日本で初めての本格的な図書館障害者サービスは、大正9(1920)年に新潟県柏崎市で始まった点字本の巡回文庫でした。そして、権利としての障害者サービスの取り組みは昭和45(1970)年からで、視覚障害者にも豊富な蔵書を利用して対面朗読を公共図書館でも実施してほしいと始まった視読協(視覚障害者読書権保障協議会)の活動でした。今では、今回対象になっている大阪府立図書館を含め、900余の公共図書館が何らかの障害者サービスを実施しています。

ところで、京都市の公共図書館は、全国に先駆けて? 1981年に財団法人京都市社会教育振興財団に委託されました。その後、視覚障害者のための対面朗読室を設置したり、CDを京都ライトハウスを通じて貸出もできるようにとの取り組みがされてはいます。しかし、障害者サービスをはっきりと位置づけるまでにはなっておらず、近畿で視覚障害者サービスを行っている図書館の集まりへも、京都府市からの参加は1館だけです。

大阪府立図書館は、盲ろう者サービスを含む多岐にわたる障害者サービスを実施しているだけに、民間に委託されたとき、障害者サービスが打ち切られないか、障害者から不安の声があがっています。司書を初めとする職員の専門性や障害者への対応などが十分なのかも含めて、「公共図書館の使命とは何か」が問われているような気がしています。

点字図書館も、指定管理者制度に移行したところが徐々に増え、突然、職員が総入れ替えになって、利用者とボランティアからは、それまでの積み重ねが切れてしまった、と問題化した館もあります。

公共図書館や点字図書館の障害者への取り組みの重要性をしっかりと押さえて訴えかけていく必要がありそうです。(加藤俊和)