はなのぼう 2009年06月20日号
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 著作権法が今大きく変わろうとしています。2006年12月に国連で採択された障害者の権利に関する条約は、日本も署名はしたものの、批准はこれからであり、国内法の早急な整備が必要です。今回の著作権法の大幅な改正は、国内法整備の先鞭を付けるものとして評価されており、6月12日に国会を通過しました。来年1月から実施されます。法律部分だけでは分かりにくいのですが、関係団体の問い合わせなどで少しずつ明らかになってきました。

 著作権とは言うまでもなく著者の財産権を守るものですが、権利条約では「障害者が文化的な作品を味わうことを妨げてはならない」としています。

 具体的には、これまで「視覚障害者」「点字と録音図書」だけだったのが、発達障害者や色覚障害者なども対象になります。そして録音図書に限らず「それぞれの障害者が必要とする方式」が可能となり、公共図書館なども著者等の許諾なしに作成して貸出しや譲渡をすることが可能になります。

視覚障害者にとっても関心が高い「テキストデータ」も含まれますが、「そのほかに情報の入手手段がない場合」という解釈に問題が残りそうです。

 さらに、CDやテープなどで録音図書が販売されたら、点字図書館であっても製作やコピー、貸出はできなくなり、必要部数を購入しなければなりません。ボランティアの音訳に頼ってきた点字図書館は、購入するための予算があまりなく、人気の高い図書でも1枚のCDを順番待ちして借りるしかない、といったことも増えそうです。

 全視情協などでは次のような問題点を指摘しています。発売される録音図書は音訳図書と同等? 墨字の原本と録音物の価格差が大きい場合は?テープ発売のときのデイジー化は? 発売時期が遅い場合は? などです。

 個人個人によって「必要な方式」は異なります。一つの音声形式で販売されたら他の形式はだめ、だと「視覚障害者が情報にアクセスする権利」が

後退します。もっと働きかけていく必要がありそうです。(加藤俊和)