はなのぼう 2008年10月20日号
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 島根県で近年話題になったのは、石見銀山でした。世界遺産の申請をしていましたが、一旦は登録延期となり、あきらめムードがただよっていました。でも、地道なロビー活動で大逆転、一気に登録が認められためずらしいケースでした。

 ところでこの10月、銀山の西、島根県浜田市の広島県に程近い旭町に、初犯や刑の軽い人たちを対象にした「島根あさひ社会復帰促進センター」が新しく誕生し、興味深い事業が開始されました。一つは日本盲導犬協会のパピー、つまり入所者が子犬とともに暮らして人間に慣れさせる活動です。そして、それ以上に私たちに直結する事業が開始されました。

 それは、全国の点字図書館などが参加する全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情協)が社会貢献事業として受託し、18年間、総額約4億円にもなる長期事業です。入所者が視覚障害者への情報提供に関する講習を受けて作業を行うもので、既に現地での講習や作業を指導する人などを採用しました。そして、視覚障害者についてや点字・録音への理解を深めるさまざまな準備が進められています。

 これまで、昭和30年代から地道に点字図書館の職員などが各地の刑務所で受刑者に点訳の指導をしてきたことをご存じの方もおられると思います。今回は講習や作業を通じて、入所者に視覚障害者への情報提供についての理解を深めていただくことで社会更正にもつながることを期待する、国の新たな事業です。また、その作業によって、点字のプリントや製本、カセットテープやCDの複製、デジタルへの変換など情報提供の作業の一部が担われることで、人員的にも厳しい点字図書館のサービスを補えることも期待されています。

 受託した全視情協の社会的な使命であるとともに、各点字図書館などにとっても意義のある重要な取り組みと位置づけられています。(加藤俊和)