はなのぼう 2008年04月20日号
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 2年前の障害者調査の結果が厚生労働省から発表されました。今後の施策を決める新しいデータとして活用されていくものと期待されます。でも、特に視覚障害の関係については、統計の「誤差」もありそうです。

 例えば、1980年の 33万6千人から、ほぼ5年ごとに視覚障害者の数は、2万9千人減った、4万6千人増えた、4万8千人減った、4千人減った、そして今回9千人増えたという結果になっています。これは、たぶんすごい伝染性眼病が流行ったり、大勢が亡くなられた? …としか言えない数の変化です。でも、聴覚障害者や肢体障害者の数は安定しています。なぜ視覚障害者についてはこのようになっているのでしょうか。

 この調査は、無作為に抽出された地区の標本調査です。このような方法は「視覚障害者が各地区に均等に居住している」ときには有効なのですが、実は視覚障害者の住んでいる地域に、かなりのかたよりがあるのです。視覚障害への理解はまだまだ十分とは言えないだけに、自然と理解されている古くからの盲学校や視覚障害者の施設のある地域には、多くの視覚障害者が居住されておられることが手帳の数からも分かっています。その地域が標本に選ばれると多くなり、それに360が掛けられてさらに大きい数字になります。反対に、少ない居住区が選ばれると少なくなります。

 調査された実数は身体障害者数9746人で、回答したのは48.4%の4715人、そのうち視覚障害者は379人、点字使用者48人、視覚障害児16人でした。これから「視覚障害者は31万人、点字使用者は12.7%、視覚障害児4900人」と推計されました。無作為抽出とはいえ、「9千人も増えた、点字使用者も増えた」というにはちょっと少ない数のように思われます。しかも、調査には点字版もありましたがあまり知られておらず、テープ版はなく、墨字の調査票で自筆し郵送する、という原則であったため、調査員が対応できていない例も目立っていたようで、回答した方が少なくなっていたことも予想されています。「統計」の数字は一人歩きしやすいだけに、その調査の方法にも注意が必要です。(加藤俊和)