はなのぼう 2008年02月20日号
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 身体を支える器具や車いすなど、障害者や介護関係の規格の整備が進められており、安全に使うために必要な部分から日本工業規格(JIS)が制定されています。

 ところで、石油ストーブの不完全燃焼で何人もの方々が亡くなられた事故がニュースになり、調査が行われていましたが、その調査を担当した「製品評価技術基盤機構」という経済産業省の外郭団体が、福祉用具の製品規格の考え方についての報告書をこのほどまとめました。その中で、肢体不自由や介護関係などについてはふんだんに記述されているのですが、視覚や聴覚の障害についてはまったく記載がなかったのです。私は以前に、委員会で「大問題だ」と意見を述べていたのですが、変わりませんでした。

 今回、経済産業省の委員会で、まだJISになっていない「福祉用具」の技術指針を審議する委員会が開かれましたが、その中身も、視覚や聴覚の障害については含まれていないものでした。私はこの経産省JISの委員でもあるので、強く再考を求め、ようやく再審議する方向となりました。

 なぜ「福祉」用具と言うのに視覚障害や聴覚障害関係が無視されるのか? 一つには、肢体不自由や高齢者介護関係の用具は世界的にも多くの企業が加わる大規模マーケットとなっているのに対して、視覚障害や聴覚障害の用具関係は桁外れに小さすぎることにあります。もう一つは、障害者関係の扱いが介護保険に沿うようになっていく傾向の中で、介護に直結しないとして視覚障害が注目されなくなってきていることもあります。

 経産省のJISの委員会にしても、20人以上の委員のうち視覚や聴覚障害に関係するのはほぼ私一人で、利用者代表や消費者保護関係や研究機関も、今のところ多数である肢体不自由や高齢者介護関係者ばかりです。

 今回審議された企画案も、視覚・聴覚障害関係は原案作成の段階で割愛されたようです。重要な障害であるはずの視覚障害が「埋没」しないよう、いろいろな分野で強く働きかけていく必要があると言えます。(加藤俊和)