はなのぼう 2007年6月号
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4月29日に起こった大阪環状線の事故、衝撃的だったのは弱視者が間違って、手引きしていた全盲の夫とともに転落されたことでした。
私もその日と同様に晴天の日曜日の午後2時半に現場を訪れてみて、弱視者が見間違ってしまったのは、次のような要因ではないかと思いました。なお、全盲の方でもこの駅でひやっとしたことが何度もあると聞いています。

  1. 晴れ渡ったあの日の午後2時半、階段を上がって点字ブロックへと進むと、急に太陽の強烈な直射光が正面から目に飛び込んできました。弱視者ならまぶしさで真っ白になり、まわりが見えなくなってしまいます。
  2. 手前側に入る電車には光が当たらず、向かい側に入った電車の方が車体がまばゆいほどで、弱視者にとっては「電車だ」と思ってしまいます。
  3. 向こう側の電車が入ると、車体からの音が直接もろに聞こえ、電車が入っているという感じですが、そこへ手前側の電車が入っても、足下のホームで遮られて、思う以上に小さくて聞こえにくかったのです。
  4. 案内放送は、電車の入る数秒前に「まもなくこのホームに天王寺方面行きが入ります」。そのあとは注意を呼びかける放送ばかりでした。せめて阪急電車などが現に実施している、「○○ホームに○○行きが」などのように、ホーム名と行き先が明確に放送されておれば、たとえ弱視の奥様が誤認していたとしても全盲の主人が気づく可能性があります。

この事故の二人が「白杖を持っていなかった」ことが非難されています。たしかに、白杖はいつも持っていてほしいものです。

ただ、手引きされているときは多くの方が杖を浮かして持っていること、まわりの人が白杖で視覚障害者と分かっても、電車が入ってきたときであり、すたすたと歩いているときはそのまま落ちるとは思わないので、声かけが遅れます。今回の事故に関しては、白杖を持っていたら防げた、とは言えないようです。

これまであまり注目されなかった弱視者の安全対策と相対式のホームの危険性、そして案内放送の重要性にあらためて気づかされました。お二人の一日も早いご回復を祈りたいと思います。