9月11日は、京都ライトハウスの創始者故鳥居篤治郎初代館長のご命日に当ります。その遺徳を偲び、京都ライトハウス創設に込められた思いと歴史を切り開かれた先駆的な業績を永く称えるために設けられた顕彰制度として今日まで受け継がれてきました。

今年の鳥居賞は、既にご存知の方もおありでしょうが、現在東京大学先端科学技術研究センター助教授として活躍されておられる福島 智(ふくしま さとし)さんに授与されました。1962年神戸市生まれ。9歳で失明、18歳で失聴した全盲ろう者。盲ろう者としてわが国で初めて大学に進学、東京都立大学大学院博士課程人文科学研究科(教育学)を経て、重度の情報・コミュニケーション障害を超えて教育・福祉の最先端を切り開く若手リーダーとしての今後への期待も含めて受賞されました。2002年度からは、バリアフリープロジェクトを発足させ、ディレクターに就任。国際的にも例を見ない、多様な障害者研究者による研究チームを編成する一方、教育学、社会学、心理学、法学、福祉工学、建築学等文理融合の共同研究を推進し、バリアフリーの理念・思想、当事者ニーズの評価システム、及びユーザセンタードデザインの3軸を包括的に研究し、文字通り現代的な障害者の課題と取り組んでおられます。

伊都賞には、大阪で自分の子育ての体験を社会に広められた「触る絵本」の取り組みで実績を上げられた岩田 光子(いわた みつこ)さんが受賞されました。視覚障害女性であり、子どもを育てる母親としてご自分が味わった経験を広く社会に問いかけ、多くの仲間やボランティアと共に新しい時代のニーズを掘り起こし、制度では補えない部分のサービスを社会的に発展させられた功績が高く評価されました。それは正に新たな時代を切り開く優れた先見性とこれまで地道に継続された実践と多くの視覚障害女性が子育てをする上で、大きな勇気と励ましを与えた確かな実績であり、そのことが社会的にも共感された結果、今回の受賞となったものです。

授賞式の最後には、お二人から受賞の思いと今後の決意を頂戴しました。福島さんは鳥居先生とは年代の違いこそあれ、障害を負って生きる能動的な生き方と教育や福祉の環境を当事者自らが開拓していく精神こそ受け継がれなければならないと強調されました。そして、先生の著書を短時間の間に読破され、短歌の一つ一つを紹介されながら受賞の喜びをご自分の言葉で語られました。

岩田さんは、子育てで感じた母親と子どものコミュニケーションの壁を超えて実践された「触る絵本」作りの輪を通じて、社会の理解や協力を深め、ボランティアの支援を通じて視覚障害に対する広範な共感の輪を広げられた実績を語られました。地道な発送作業、「触る絵本」の製作活動など、活動の随所に制度にはない部分のサービスを実践された情熱と実践の力が満ち溢れた話として私たちに多くのことを語りかけられました。

お二人の功績に参加者一同、深い感銘と、これからのご活躍に対し、大いなる賞賛の拍手を送った次第です。