夏の風物詩(後編)

(全国各地で観測史上最も早い梅雨明け。毎日暑い日が続きます。さて、引き続き今月も夏のお話です。先月の「京まる」をお聞き逃しのかたは、サピエ図書館にコンテンツアップしていますのでよろしければご利用ください。)

遠泳は二列縦隊。つまり、自分ともう一人、隣に相方がいることになる。よく似たレベルで組んだこの二人を「バディ」と呼び、泳ぐ前と泳いだ後は手を繋いだ状態で腕を上げ、「バディ!」と声を出す。水に入る前の「一緒に頑張ろう!」という気合いと、二人で無事に泳ぎ切ったことを確認するための掛け声である。

ちなみに泳いでいる最中は「エーンヤコーラ」という掛け声を出す。先生と児童とのコール&レスポンスといったところだ。平泳ぎで声を出しながら泳ぐということは、顔を上げた状態で泳がなければならない。臨海学習は、何としても泳ぐ技術、とにかく泳ぎ切る体力、絶対に落ちひん(ギブアップしない)ぞという精神力が、6年間のプール学習で培われてきたことの集大成でもある。そして泳ぎ切ると必ず「バディ!」。天気がくもりだったのか水温が低かったのか記憶は曖昧だが、たき火にあたりながらの温かいあめ湯が、泳ぎ切った達成感と安堵感に浸らせてくれたことは覚えている。

遠泳とは別に、水泳大会もあった。プール学習で徹底的に教えられるのは遠泳でも必要な平泳ぎと、タイムを計るクロールで、背泳ぎとバタフライは必要最低限。今のお子さんの習い事ランキングのトップには水泳が入っているが、当時はひと学年250人ぐらいいる中で、習い事で水泳をしていたのは10人もいるかいないか。習っている子の泳ぎはさすが、惚れ惚れするような泳ぎっぷり。バタフライはもはや習っている子対決で、クラス構わずみんなが「頑張れ~!」と応援していた。

私も水泳を習いに行ってはいないし、背泳ぎもバタフライも我流だが、水への抵抗をさほど感じないことと、とりあえず泳ぐことができるという泳力、そして当時のささやかな自信を、25メートルプールを何往復もした日頃の学習でつけてくれたことは、今でもありがたいなぁと感じている。

 

(はなのぼう8月号より)