学びいろいろ

新年度から3か月。新社会人、新入生もそろそろ落ち着いてきた頃だろうか。
先日、世代や性別などの違いによる他者理解をテーマにした番組が放映されていた。とあるレストランのシェフと新人さんとのコミュニケーション。新人さんは毎日、修業の日々。当然ながらお店の営業と同時進行のため、質問のタイミングがなかなか掴めない。加えて、忙しくお店を回すシェフに“壁”を感じ「もしや、自分が聞きたいことは『こんなんもわからんのか!』という内容ではないだろうか」と、ますます聞きづらくなってしまう。必要なことは自分でノートにまとめているが、「聞けない」代わりに新人さんが頼っているのが、動画サイトだった。
一方、ベテランシェフ。忙しくしているものの、新人さんの仕事ぶりを気に掛けつつ「なんで聞いてきぃひんのやろ」と感じている。かといって、シェフ側から歩み寄り、手取り足取り細かく教えるのも料理の世界ではまた違う。互いにすれ違う思い。はたまた、どうしたものか…。
悩める二人の間をタレントが取り持ち、一度、シェフと新人さんの立ち位置を交替してみることに。新人さんが考えたメニューを、同じ空間で一緒に料理する中で「これは何の目的で使うん?」「これは?」と、矢継ぎ早に飛ぶシェフから新人さんへの質問。それが“圧”となり、はじめは萎縮していた新人さんだったが、次第に慣れてきた。共同作業をするうち、互いの取り組み方や考えが見えてきた、ということだ。

ここで思う。新人さんが用いている動画サイト。好きな時間に何回でも視聴できる。巻き戻しも早送りも、一時停止も自由。再生速度も変更できる、自習にはもってこいの便利なアイテムだ。
しかし、人からしか学べないこともある。一方向的な動画に対し、人とのやり取りは双方向的。料理という技術だけでなく人間相手のお客様商売ならば、相手の気持ちを慮ることや相手との距離感は人間からしか学べない。
活用できるものは上手く使うと良い。また、私自身としては「聞きづらい」という雰囲気、壁を作らないようにしたいなぁと思う。

(はなのぼう6月号より)