「市内の避暑地」

とある番組で、京都の旅を特集していた。場所は京都の奥座敷・貴船。
澄み切った川のせせらぎに、木々の緑。座敷に敷かれている真っ赤な毛氈が景色に映える。
その昔、茶店が床几を川の上に置き、足を川につけて涼しさを楽しんでもらうのが
始まりだったとのこと。時節柄、おお、涼しそう~と思いながら見ていた。
ただでさえ暑い、盆地の京都。しかしこの貴船は、京都市内と比べて気温も
5度から10度ほど低い。実際、この文章を書いている6月の時点でも3度の差がある
(ウェザーニュース「1時間ごとの天気予報」にて調査)。
ずいぶん前、一度だけ貴船の川床で食事をした記憶がある。
お手軽に楽しむなら流しそうめん、という選択肢もあるが、その時は上品な京料理に舌鼓。
ちょっと手を伸ばせば川の水に届き、その水が冷たさを通り越して痛く感じたのを覚えている。
涼しさとおいしい食事をダブルで楽しめるという、なんとも贅沢なひとときだった。

川床も良いが、健脚な方は鞍馬からのコースもおすすめ。叡山電鉄鞍馬駅から鞍馬山、
木の根道、奥の院から貴船へとぐるっと反時計回りに抜ける道だ。奥の院まではひたすら
山登りだが、そこを過ぎて貴船まで降りてくると えも言われぬ爽快感がある。
中でも木の根道はその名の通り、木の根っこが地表のそこかしこに出ている。
イメージとしてはメロンの網目、といったところだろうか。木の根なので間隔は
均一ではないし高低差も違うが、あの網目が足下でボコボコしている感じ。
しかし、枝を折らないのと同様、根っこは踏まないように歩くのが至難の業でもある。
なお、実際にお出かけの際は、ご自身の体調はもちろん、お店や天候、現地の事情など、
最新の情報をご確認ください。

「ダブル」だの「メロン」だのと、表現力の乏しさによる風情のぶち壊し感は否めないが、
お出かけが難しい方には、この文章で少しでも涼しさが伝わりますよう。

(※ 2021年7月26日現在 叡山電鉄鞍馬線は一部運休しております。)

(はなのぼう 7月号より)