「春の嵐」

 

春一番に始まり、今年の春はやたらと風が強い日が多いように思う。

春休みの間は子どもたちに、ここぞとばかりに家の手伝いを促す

(自分の家事を無償で委託)。特に助かったのは洗濯。

普段は夜中にコソコソ干す洗濯物も、朝から干してくれるとなんだか気持ちが良い。

 

ある日のこと。情報ステーションがある3階の窓から見えたのは、

大きく左右に揺れる船岡山の木々。背中側の窓からはビュービューと、恐ろしいほどの風の音。突風か? 台風か? 嵐か? と思うほど、滅多に聞かない音がしていた。

夜。帰宅すると、荒々しく取り入れられた洗濯物と、絶賛稼働中の洗濯機の音。

「どうしたん?」と聞くと「実は…」と、その日の出来事をとうとうと語り出した。

 

昼も過ぎ、課題はそっちのけで惰眠を貪る姉。気付けば夕方。

ぼちぼち洗濯物を取り入れるか…と外へ出ると、干していた洗濯物はビシーッと端に寄り、

一枚に至ってはお隣のベランダにお邪魔する勢い。危ない危ない…と思いながら取り入れると、

あれ? 洗濯物って、これだけやったっけ?

その瞬間、かろうじて我が家の敷地に引っかかっていた洗濯物を思い出す。

まさか…? と下をのぞき込むと、物干し竿ごと草むらに落ちているではないか!

刻々と近付く日の入り。暗くなるまでに救出しないとエラいことになる!

自分より背の高い妹に取りに行かせることも考えたが、そこは姉のプライドか。

妹に見守ってもらいつつ、雑草の中を突き進む姉。

以前、そばの川で繰り広げられていた蛇とカラスの戦いを途中で思い出し、

やっぱり戻ろうか…と逡巡するも「もうちょい奥、もーちょい」と、

上から容赦無く指示する妹。

かくして、物干し竿と洗濯物は無事救出。稼働中の洗濯機の音は、

その洗濯物だったのだ。それにしても物干し竿ごと落下するとは。

下が道路でなくて良かった、とつくづく思った。

その事件以降も洗濯は引き受けてくれるものの、

天気と共に風力を気にするようになったのだった。

 

(はなのぼう5月号より)