戻ってまいりました
公開
4月の午後。複数の金融機関に用事があった私は時間休をいただき、いそいそと出掛けた。前日の夜からバスの時刻も調べ、段取りもシミュレーション済み。私にしては珍しく、想定通りに事は運んだ。時間に余裕が生まれ、悦に入った私は昼休憩がてら円町でひとり牛丼。テーブルをふたつ空けて左には、外国人観光客と思しき若者たち。私よりも良いもの食べてる!? うらやましい!
お腹も満たされたところで西大路通を上がるバス停に向かうと、そこにはズラリと並んだ外国人観光客の皆さん。どちらへ? 北野天満宮? その方向のバスも来たが、乗らない。ということは…。そう、皆さんが目指すは金閣寺! 目指す場所は違うけど、私もそのバス!! 愕然とした。バスが到着しても満杯の時もあり、一台、二台とやり過ごす。…間に合うか?と思ったその時、204系統が来た。このバスも金閣寺に行くのだが、205の方がメジャーなのか、躊躇し、あまり乗る様子がない。“教える”という親切心はどこへやら、チャーンス!とばかりに先に乗ると、後からじわじわと乗客が増えてきた。「ノーマースク! ダイジョブー! イッショニ、トリマショー! ワン、ツー、スリー!」と、後方で催される写真撮影大会。振り向かずとも、実に楽しそうでなにより。
やがてバスは金閣寺最寄りの停留所に到着。運転手さんに挨拶し、順に降りていく。すると運転手さん、降りる乗客を一旦制止し、ドアを閉め、バスは前へ進んだ。車内はもう大興奮、遊園地のアトラクション状態。「おいおい、俺たち、ここで降りるんだぜ!」「待ってくれよ~」的などよめき。止まると、再び乗客を降ろし始めた。安堵の表情と賛辞を贈るご一行様。要は前にいたバスが停留所を離れたため、後続のバスのために前に詰めた、というわけ。私たちには日常の“市バスあるある”だが、さぞ焦ったことだろう。
出勤途中にある民泊は、完成してもコロナのために数年出番がなかったが、ようやく外国人観光客が出入りする様子がうかがえた。この号が出る頃にはゴールデンウィークも過ぎ、観光客の戻りはさらに増えていることだろう。多いな!と思いつつも、若干嬉しくもある今日この頃である。
(はなのぼう5月号より)