中国春秋時代・斉の国で活躍した宰相の安嬰(あんえい)。ある時主君から「妃の男装趣味が民の間で流行り風紀が乱れている。禁令を出しても守られない」と嘆かれます。そこで「妃が止めずして民が止めるわけがない。君のやり方は牛頭を掲げて馬肉を売るようなもの。宮中で禁止すれば民は従う」と、妃に甘く民に厳しい主君の姿勢を諫めます。その通りにすると流行が収まったことから「牛頭馬肉」の言葉が生まれ、これが後に変化して「羊頭狗肉」になります。

さて先の国会で「障害者差別解消法」の認知度が極めて低いことが取り上げられました。国側は「広報に力を入れる」と答弁していましたが、広報だけでは普及は期待できず、人手や予算といった財政的な裏付けがなければ法の実効性は乏しいままとなるでしょう。

情報ステーションにおきましても提供しているサービスをご存じない方がまだまだおられ、PRのさらなる拡充が必要となっていますが、その一方で、情報バリアフリーを掲げながら予算や職員態勢等が追いつかず、ご要望やご期待に十分に応えられないまさに「看板倒れ」ともとられかねない場面も起きており、実力を伴ったPRの難しさを痛感しているところです。

とはいえ利用の掘りおこし、製作、貸出、機器利用支援、啓発活動等々、情報保障の一連の業務は、待ったなしで流れています。理念と現実の間で、何をすべきか何ができるかをしっかりと見定め、合わせて皆様方のご理解とご協力をいただきながら、本年もこれらの事業に鋭意取り組んでまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

(五十嵐 幸夫)