はなのぼう 2007年12月20日号
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 「地デジ」— 今のテレビは2011年7月24日までに停止され、地上波のデジタル放送に切り替えられることになっています。チャンネルが増える、テレビの前にいる人が番組に参加することもできる、画面は細かくきれいになる、いいことずくめのようですが …。

 いま使用しているテレビではだめだ、ということは知られてきました。でも、テレビの生産能力はざっと年1千万台程度ですので、いま使われている1億5千万台ものテレビが3年半で買い換えられるはずはありません。その場合、チューナーという2万円ほどの機械を付ければ、地デジ放送を見られることは少しは知られてきました。

 でも、多くの家庭ではアンテナを付けないといけない、7万円以上もの工事費が必要な家庭が多くある、についてはほとんど知られていません。そのため2011年の「その日」、全国で2割以上の家庭が取り残され、「その日」に急にテレビが映らなくなる家庭が続出して大変な騒ぎになる、延期せざるを得ないのではないかとすら言われています。

 障害者にとってはそれ以上に大きな問題があります。12月6日に大阪で地デジの障害者への問題点が話し合われました。視覚障害者向けの解説放送は、NHKの朝のドラマなどだけで非常に少ないのでもっと増やすようにと提言されています。でも、それ以前に、地デジになると、画面を見なくてもかなりの出費が必要になります。いまのラジオでは聴けなくなります。さらに、解説放送を聞こうとすると、そのたびにリモコン操作が必要で、画面が見えないと設定できないことが分かりました。また、せっかく増えたチャンネルは、野球放送の延長やニュース、天気予報などに使用されてしまい、障害者に必要なチャンネル利用は想定されていません。

 昨年12月に国連で採択された障害者権利条約を日本もようやく署名し、大きなよりどころとして、防災情報も含めて、すべての視覚や聴覚の障害者にも対応する地デジになるよう、強く働きかけていくことが必要です。(加藤俊和)