昨年12月号から3回にわたって、視覚障害者の視点で地デジ(地上デジタル放送)に関する情報をお知らせしてきました。
 今回は、最終回の3回目。その他の視聴方法とアンテナやリモコンについてお知らせします。

4.デジタルチューナーにスピーカーをつなぐ方法
これまでラジオ等でテレビの音だけを聞いておられた方は、地上デジタル放送では聞くことができません(AM放送・FM放送はこれまで通り聞けますが、テレビの音は聞けなくなります)。
そこで、今テレビを持っておられない方でこれまでのようにテレビの音だけを聞きたいという場合には、デジタルチューナーとアンプ付きのスピーカーをつなぐという方法があります。健常者の方が音だけを聞かれることはほとんど無いため、電気屋さん等でもあまり知られていない方法ですが、テレビの画面を見る必要がない方にはこれで十分です。尚、この方法では、音質はつなぐスピーカーの性能に依存します。
5.ワンセグ(テレビ)付きの携帯電話等を利用する方法
地上デジタル放送の中で、画質や音質を下げることで携帯電話などの携帯機器で受信できる放送として「ワンセグ放送」が行われています。NTTドコモのらくらくホンをお使いの方は、らくらくホンのプレミアムや6でこの放送を視聴できます。通常の地上デジタル放送と同じ番組を視聴できますが、携帯電話のバッテリーが早くなくなる他、室内では電波の入り具合が悪いという欠点があります。しかし、他府県でテレビを視聴する際に必要な「地域設定」も音声案内を聞きながら操作できますので、外出先でもテレビを楽しみたい場合には有効な方法の一つです。又、地デジに対応しているテレビアンテナ端子が自宅にあれば、ケーブルで携帯電話のアンテナとつないで、電波の入り具合を良くする方法もあります(エレコム社のMPA-ATシリーズ、家電量販店などにて2千円前後で販売)。
尚、ワンセグ付のラジオも販売されていますが、他府県に持っていく場合には画面を見て「地域設定」をしないといけないなど使いにくい点があり、又価格も割高感があります。

アンテナ工事について

 今のテレビのままでデジタルチューナーをつなぐ場合やテレビを買い換える場合、UHFアンテナが必要です。既にUHFアンテナでアナログ放送を視聴しておられる場合でも、アンテナの向きなどの調整が必要になることがあります。もし、お手持ちのアナログテレビにデジタルチューナーをつないでみて、視聴できるはずの放送の映像にモザイクがかかったり、音声が出なかったりする場合、地デジの電波をうまく受信できていないことが考えられます。その場合はアンテナ工事が必要になります。

 アナログ放送終了が近づくとアンテナ工事の申し込みの集中が予想されますので、工事が必要な方は今年中に済まされることをお薦めします。尚、アンテナ工事は電気屋さんで2〜9万円程度で行われていますが、工事の内容によって費用が異なりますので電気屋さんにご相談ください。

 また、アンテナ工事をすると、今視聴しているアナログのテレビ放送が映らなくなることもあります。デジタルチューナーを取り付けるなど、地デジが視聴できる設備を整えるのに合わせてアンテナ工事を依頼されるといいでしょう。

  • ※ケーブルテレビを利用されている方は、アンテナ工事は必要ありません。
  • ※一戸建て以外の建物(アパートやマンションなど)にお住いの方は、大家さんや管理組合などにおたずねください。
  • ※経済的な理由で地デジが視聴できない方で、一定の要件を満たす方に簡易チューナーが給付され、アンテナ工事も無料で受けられます(今年度分は2月26日が締め切り)。来年度も同様の条件で制度が実施されることが予想されますので、今年度の申請に間に合わなかった方は、来年度の給付についての情報にご注目ください(情報が入り次第「点字京都」紙上にも掲載します)。

リモコンについて

 デジタルチューナーや地デジ対応テレビでは、音量やチャンネルの切り替えなどはリモコンで操作することになります。これまでにリモコンを使われていた方にとっては、ボタンの数は増えますが、電源のオン・オフや音量やチャンネルの切り替えなどの使い勝手はこれまでとあまり変わりませんので、視覚障害者単独で操作することができます。

 リモコンを使われたことが無い方や、リモコンのボタンが小さいと感じられた場合は、ボタンがより大きい「学習リモコン」を使う方法があります。これはリモコンの機能を赤外線で転送して使うもので、3千円ぐらいから発売されています。また、複数のメーカーのテレビに対応したリモコンでボタンが大きくわかりやすい形状のものも発売されています。高機能で新しいテレビほどリモコンのボタンの数が多く複雑になっていますので、健常者のご家族にはテレビ付属のリモコンを使っていただき、私たち視覚障害者はボタンの大きいリモコンを別途購入して自分にとって必要な操作を行う、という方法も選択肢の一つです。