第23回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
大会長 松永信也

 私は15年程前に中途失明しました。相談支援を受け、生活訓練、「リハビリテーション」につながることで、視覚障害になって失ったと感じたいくつかのことを取り戻し、再び社会に参加することができました。とてもうれしいことです。最近では、スマートフォンなどを便利に扱う仲間も出てきました。障害をカバーする道具や機器の発展は、まさに専門家の皆様の研究、努力の賜物だと感謝しています。
 しかし、現代の日本で、視覚障害として身体障害者手帳を取得している31万人の他に、まだ何も情報を持たない仲間が大勢います。家に閉じこもっている仲間、自分の障害を受け止められないでいる仲間、閉ざされていく視界に恐れおののいている仲間がいます。
 今回のテーマ「ひとりじゃない。つながり、ひろげる『支援の輪』」には、すべての仲間に思いを寄せ、そのような孤立した状況をなくそうという強い決意が込められています。どこで暮らしていても、何歳でも、原因が何であっても、家族がいてもいなくても・・・視覚障害になったすべての人に情報が届き、一歩踏み出せるよう、専門家同士がしっかりとつながる機会をつくる――それが今回の京都の使命です。

 京都。140年程前の明治初期、新島八重の兄・山本覚馬は中途失明しながらも、京都の近代化のために尽力しました。覚馬が活躍したこの地に、自身も全盲で、視覚障害者の社会参加に一生を捧げた鳥居篤治郎により、1961年京都ライトハウスは設立されました。
 本大会は、京都における視覚障害者の総合施設として発展した当施設でプレセッションを開催し、交流の口火を切ります。
 大会初日は覚馬も設立に関わったとされる同志社大学に会場を移し、日本初の全盲弁護士として精力的に活動を続けられる京都在住の竹下義樹氏、全国初の盲学校である京都府立盲学校で長年教鞭を執られている岸博実氏、京都大学で研究・診療を続けてこられた高橋政代氏と、京都に縁のある方々のご講演を予定しています。特に高橋政代氏には日々進んでいる網膜再生医療の最新情報をお話しいただきます。

 日本の歴史においても、視覚障害者福祉においても、先人達の智恵の結集するこの古都に、視覚障害リハビリテーションの最新の研究成果が結集します。それらをともに分かち合い、活かし合うことで、つながりは広がり、輪になります。
その輪はきっと、一人で悲しみ苦しんでいる視覚障害者に、笑顔を届けることになると信じています。
 京都の夏をゆったりご堪能下さい。

2014年1月吉日